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渋谷の父 ハリー田西の連載小説


「渋谷の父 占い事件簿 不死鳥伝説殺人事件」

〜第二の的中(6)〜

森山敬一郎の長男・海人の誘拐事件はついに公開捜査となった。
しかし、その後も犯人側からの接触は一切なく、海人の安否も不明であった。
そして、公開捜査となったことで、この事件は、またまた岡倉天外の予言が当たってしまったという形で、茶の間に大きな衝撃をもって伝えられた。
 朝から新聞やテレビで報道合戦になっている「海人ちゃん誘拐事件」のニュースを、渋谷の事務所でハリー田西と来宮綾乃は深刻な顔をして見ていたが、綾乃がうんざりするように言った。
「また、岡倉天外の占いがこんなに当たってしまうなんて、絶対変ですよ。おかしすぎますよ」
 そんな綾乃を見て、ハリーは思わず苦笑を浮かべた。
「ハリー先生、なんで笑うんですか?」
「ごめん、ごめん。でも、綾乃ちゃんがあまりに真面目くさった顔をして、面白いことを言うから・・・」
「先生、面白いことを言うって、どういう意味ですか?」
 綾乃はプリプリだ。
「だって、綾乃ちゃんは日頃占いなんて当たらないという人がいるとけっこうムキになって怒るくせに、今回のように岡倉天外の占いがたてつづけに当たると、これはヘンだって言い出すんだもの。それって日頃の綾乃ちゃんの言い方と矛盾してないかい?」
「そりゃたしかにそうですけど、この岡倉天外の占いに限っては何か裏があるようで信用できなくて・・・ハリー先生だってそう思うでしょう?」
「そう思うとは?」
「だって、MASAKIの事故も今回の誘拐事件も、ゼーンブ岡倉天外が陰で糸を引いているのに決まっているじゃないですか」
「そうかなぁ」
「そうですよ。きっと岡倉天外がマフィアか何か組織にお金を渡して、事件を引き起こしているんですよ」
「マフィア?おいおい、そこまでやるか?」
「やりますよ、やりますって、あの顔は・・・」
「ふん、人を顔で判断しちゃいけないよ」
「あれぇ、先生こそ、よく人の性格は顔相に出るっていうじゃないですか」
「まぁそういうケースもあるけど・・・」
「ほらほら、先生のそういうところって一貫性なさすぎ!でも、そろそろ世の中の人だって、こんなに予言が当たってしまうのはおかしいと思い始めていますよ。ネットを見たって、そういう書き込みがすごく増えているんから」
「へえーっ、以前は天地推命学の占いはよく当たるという書き込みが多かったんじゃないの」
「ええ。そういう天命の熱狂的なファンサイトみたいなものもありますけど、でも、このところ2ちゃんねるを見ても、あれだけ当たるのは変だ、絶対に裏で何かやっているという書き込みばっかりですよ」
「でもさ、仮にそういうことがあるとしても、彼らが何かをやっているという具体的な証拠がないもの。ネットで好き勝手にいうのは楽だけど・・・」
「私もそれがじれったいですよね。ああ、警察はいったい何をやってるんでしょうね。特にあの藤島さんはどうしてるのかな、んもう」
 と、その頃、
「ハ、ハックション」
 藤島管理官が大きなクシャミをした。
「管理官、カゼですか?」
 クシャミの風を顔を背けてよけた部下の望月刑事が、皮肉を込めて言った。
「いや、誰かが悪い噂してるのだろう。ふん、オレのカンは当たるんだ」
 藤島は、綾乃に言われるまでもなく、天命関係者の動向を藤島なりに独自に粘り強く調べ始めていた。が─────。



目 次
プロローグ
二人の占い師(1)
二人の占い師(2)
二人の占い師(3)
第一の的中(1)
第一の的中(2)
第一の的中(3)
第一の的中(4)
第二の的中(1)
第二の的中(2)
第二の的中(3)
第二の的中(4)
第二の的中(5)
第二の的中(6)
相次ぐ失踪(1)
相次ぐ失踪(2)
相次ぐ失踪(3)
相次ぐ失踪(4)
悲しい結末(1)
悲しい結末(2)
悲しい結末(3)
悲しい結末(4)
悲しい結末(5)
悲しい結末(6)
悲しい結末(7)
悲しい結末(8)
悲しい結末(9)
解けない謎(1)
解けない謎(2)

※この物語はフィクションであり、登場する団体・人物などの名称は一部許可を受けたもの以外すべて架空のものです。