HOME > 渋谷の父 ハリー田西の連載小説

渋谷の父 ハリー田西の連載小説


「渋谷の父 占い事件簿 不死鳥伝説殺人事件」

〜相次ぐ失踪(4)〜

3時間後、本庁に戻った藤島のもとに、福島県の白河警察署の鈴木という巡査部長から連絡が入った。
 果たして澤井天鵬は実家には戻っておらず、連絡もとれず、両親も心配しているという。
 鈴木巡査部長からの報告によると、澤井天鵬こと相笠律子の実家は、福島県白河市で造り酒屋を営んでいた。家は弟が継ぎ、長女の律子は、短大進学の折に上京し、以来、東京で就職、結婚、離婚を経験し、数奇な運命に導かれるように占いの道に入ったという。実家への連絡はかなりマメにしているほうだという。
 娘の消息が不明になっていることを聞くと、両親は驚き、
「何かにとりつかれたかのように、占いなんて変な道に入ってしまったからだ」
 と、電話口で嘆いたというが、郡山署を通じて捜索願を出してくれた。
 ハリーは、藤島からの電話で天鵬の状況や経歴などを聞いた。
 実は、田中星羅も似たような経歴をしていた。
 どうやら女性が占いの道に進むにあたっては、ある種の似たような環境と運命的なめぐり合わせがあるようにも思えた。
 一方、実家の両親から捜索願が出されたことで、藤島は、
「これで天命の本部に堂々と事情を聞きにいける」
 と意気込んだ。
「ハリーさん、一緒に天命の本部に乗り込んでみましょうよ」 「えっ?でも、民間人の僕があなたと一緒に行動してもかまわないんですか?」
「なに言ってるんですか。もう天鵬さんのマンションにも行ったし、十分捜査にかかわっちゃっているじゃないですか。公式には禁止されていたって、非公式にはOKですよ」
「そりゃ、星羅のことがあるから、そうしていただけたら、どんなに嬉しいか・・・何か手がかりがつかめるといいですね」
「まぁ、何か出てくることを期待して・・・。いや叩けば何か出てくる。出してみせますよ」
 電話の向こうで藤島が含み笑いをしているのが、わかった。
 ところが、その時、突然緊急の知らせが入ったらしく、電話の向こうで藤島に声がかかった。電話越しになにやら騒然としているのがわかる。
「ハリーさん、例の誘拐事件で何か動きがあったみたいだ。天命の本部に行ってみる件は、少し待ってほしい」
「えっ?誘拐事件で?本当ですか?えーと、わかりました。でも、とりあえず天命の方へは僕ひとりで行って話を聞いてきますよ」
「そうですか・・・」
「いえ、いえ、それより、藤島さん、頑張って下さい」
「ああ、いちおうこれが仕事なんでね。それより、そんなことはないと思いますが、ハリーさん、くれぐれも行動のほうは慎重に・・・」
「心得ていますよ」
「じゃあ・・・また・・・」
 藤島は、後ろ髪をひかれるように言葉を締めくくると、電話を切った。
 ハリーは、少し心細さを感じながら、とにかく直接天地推命学の本部に乗り込もうと思いを固くした。



目 次
プロローグ
二人の占い師(1)
二人の占い師(2)
二人の占い師(3)
第一の的中(1)
第一の的中(2)
第一の的中(3)
第一の的中(4)
第二の的中(1)
第二の的中(2)
第二の的中(3)
第二の的中(4)
第二の的中(5)
第二の的中(6)
相次ぐ失踪(1)
相次ぐ失踪(2)
相次ぐ失踪(3)
相次ぐ失踪(4)
悲しい結末(1)
悲しい結末(2)
悲しい結末(3)
悲しい結末(4)
悲しい結末(5)
悲しい結末(6)
悲しい結末(7)
悲しい結末(8)
悲しい結末(9)
解けない謎(1)
解けない謎(2)

※この物語はフィクションであり、登場する団体・人物などの名称は一部許可を受けたもの以外すべて架空のものです。