HOME > 渋谷の父 ハリー田西の連載小説

渋谷の父 ハリー田西の連載小説


「渋谷の父 占い事件簿 不死鳥伝説殺人事件」

〜解けない謎(1)〜

 ひき逃げによる事故死なのか、あるいは口封じのための殺害なのか、夜明け前の薄暗がりの中で安藤天蘭の遺体が発見されるや、日の出の経過とともに、事態が少しずつ動いて行った。
 天蘭の所持品から身元が割れ、天命推命学の本部に代々木南署から連絡が入ったのは、遺体発見からおよそ2時間ほどたった午前7時10分のこと、警備会社の当直の職員が電話を受け、そこから総務担当の小林直樹に連絡が入り、ただちに小林から天命の幹部である"四天女"の高野天翔と北山天凛に伝えられた。
 小林から電話を受けた天翔は、
「小林さん、先生には、天外先生には伝えたんですか?」
 と言った。
「いえ、私も今連絡を受けたばかりで、まだ大変に混乱をしておりまして、とりあえず天翔さんと天凛さんにと思いまして・・・それに先生はいつも夜中に執務をされていて9時過ぎまではお休みになっておられるはずですから・・・でも、お知らせしたほうが・・・」
「ううん、連絡するのは待って下さい。天外先生は、もともと心臓のご持病もあるし、天鵬さんのことでとてもショックを受けておられたから・・・私、すぐ本部にまいります」
 天翔はそういって電話を切り、石丸弁護士と北山天凛に連絡して、本部に集まることを打ち合わせた。天翔の胸の中を悪い血が駆けめぐっているような重苦しい圧迫感が襲った。
 天翔は意を決して天命本部へ駆けつけるべく支度を始めたが、ふと思い立って、ハリーのケータイを鳴らした。 「ハリーさん」
「あっ、天翔さん、どうしましたか?」
「あの、実は、安藤天蘭さんが・・・」
「安藤天蘭さんがどうかしたんですか?」
「はい、夜中にひき逃げされて・・・」
「ええ〜〜〜〜〜〜〜っ!なんですって〜〜!安藤さんが〜〜〜〜?」
 ハリーはものすごい声を上げてしまった。ハリーは"四天女"第一位の安藤天蘭こそが、事件の真相に迫れる鍵だと思っていた。その安藤天蘭に近づくことが、混迷する事件の謎を解く突破口になると思っていたのだ。
 ところが、その大事なキーパーソンが消されてしまった・・・
「あなたは、それをどうして僕に・・・」
「私、ますます何がなんだかわからなくなってしまって・・・でも、あなたならこんな、動揺している私のことをわかって下さるかと思って・・・」
「わかりますとも、わかりますとも。僕でよければ、あなたを支えます。ずっと、ずっと支えます。どうか気を確かに持って下さい」
「は、はい・・・じゃあ、私、これから急いで本部に行かなくてはならないので・・・先生のことも心配だし・・・」
「あっ、天外さんが?」
「ええ、じゃあ・・・」
 そういうと天蘭はケータイを切った。
「うう〜ん、えらいことになったぞう」
 ハリーは寝起きの頭をかきむしった。それから思いたって、藤島のケータイを鳴らしてみた。
「あ、藤島さん?」
「おお、ハリーさん、いま私も電話をしようと思っていたところですよ」
「藤島さん、聞きましたよ。安藤天蘭が殺されたとか・・・」
「はぁ、まだ事故か事件かは調査中ですが、たぶん・・・じゃないかと」
「口封じですかね」
「うう〜ん、そこんところはなんとも・・・でも、えらいことですわ。あれ、でも、この件をハリーさん、なんで知ってるんですか?」
「今しがた高野天翔さんから連絡をもらって・・・」
「ほほ〜っ、あの美人さんがあなたに・・・あなた、いつのまにあの美人と・・・」
「い、いやいや、そ、そんなことはないですよ。ただ、彼女とは同じ仲間を殺された者同士というか・・・」
「いや、いいんですよ。ただ、ハリーさん、あの人にはあまりこちらの捜査情報を漏らさないでいただきたい。あの人も、天命の人間なんでね」
「はい、それはもちろん」
「じゃあ・・・これからいよいよ令状をとって天命に乗り込みますんで・・・」
「げっ!ホントですか?!」
「あっ、これも彼女に言わないで下さい」
「はぁ・・・」
 ハリーは茫然と電話を切った。《いよいよ令状をとって天命に乗り込みます》
藤島の言葉が耳にこだました。
事態が大きく動き出そうとしていた。警察は果たして真相に迫れるのか?岡倉天外は何を語るのか?
そして、高野天翔は・・・ハリーは再び頭をかきむしった。

目 次
プロローグ
二人の占い師(1)
二人の占い師(2)
二人の占い師(3)
第一の的中(1)
第一の的中(2)
第一の的中(3)
第一の的中(4)
第二の的中(1)
第二の的中(2)
第二の的中(3)
第二の的中(4)
第二の的中(5)
第二の的中(6)
相次ぐ失踪(1)
相次ぐ失踪(2)
相次ぐ失踪(3)
相次ぐ失踪(4)
悲しい結末(1)
悲しい結末(2)
悲しい結末(3)
悲しい結末(4)
悲しい結末(5)
悲しい結末(6)
悲しい結末(7)
悲しい結末(8)
悲しい結末(9)
解けない謎(1)
解けない謎(2)

※この物語はフィクションであり、登場する団体・人物などの名称は一部許可を受けたもの以外すべて架空のものです。